実は私、走る人に憧れているのだ。
私は歩くのが好きだし、結構速い。
タンちゃんに鍛えられたからね。
タンちゃんと一緒に、他のお散歩の人やウォーキングの人をどんどん追い越しながら散歩する。
でも、ジョギングの人には抜かれてしまう。
そんなに速く走っていなくても、着実に差は開き、やがてその人は見えなくなってしまう。
かっこいいなぁ。
なので、このタイトルに「おっ」と思った。
もちろん、しをんちゃんが書いているのが一番の理由だが。
しをんちゃんのは、大学まで長距離をやってた30過ぎの不動産会社の社員が、社長命令でニューヨークマラソンに出る話。
「スチャラカ→なんだよ、いい話じゃん!」の移行が相変わらず絶妙。
しかも「お嬢様と養育係」で来たか〜。雅だわ。
上手いよ、職人芸だよ、しをんちゃん!
東京マラソンがテーマのあさのあつこのは、王道な感じですかね。
近藤史恵。
この人は読んだことがなかったのですが、これがすばらしく良かったのです。
主人公は半年の予定でパリに留学してきた夕(ゆう)ちゃん。
彼女はバレエ教室の娘さん。
もちろんお母さんが先生で、小さい頃から厳しいレッスンを積んできた人。
しかし、五歳下の妹の才能にかなわないことに苦しみ、妹がハンブルグ・バレエに留学したあと、バレエをやめてパリに来たのだ。
この設定。
千花ちゃんを思い出さずにはいられないわ…。
でも夕ちゃんは、友達になったアンナと話すうちに、努力は無駄ではなかった、と思えるようになった。
千花ちゃんも、こういう風に生きて行けたかもしれない。
私は、もしかしたら、このお話自体が、千花ちゃんのために書かれたお話なんじゃないかと思ってしまったくらいです。
まあ、それは違うかもしれないけど、すべての「努力する人」のために書かれたことは間違いない。
「最終的に結果は出せなくても、そのたびにひとつひとつ、努力の対価の幸せは与えられていた」
という夕ちゃんの言葉に、私なりに深く頷くのでした。